若返る男子ツアー! 石川遼のスーパーショットに酔ったフジサンケイ。歴史に残る薗田峻輔とのプレーオフ。

夢だった先輩・薗田俊輔とのプレーオフを勝ちとった石川遼は賞金ランキング、1位に浮上した。(山梨・富士桜CC)=写真提供:日本ゴルフツアー機構
夢だった先輩・薗田峻輔とのプレーオフを勝ちとった石川遼は賞金ランキング、1位に浮上した。(山梨・富士桜CC)=写真提供:日本ゴルフツアー機構

 石川遼(18)と薗田峻輔(20)とのプレーオフが実現、石川遼が4ホール目に先輩の薗田を破るという今季ツアー最高のシーンを二人が演じました。フジサンケイクラシック最終日(5日、山梨・富士桜CC)は、最終18番の”バーディー(石川)・ボギー(薗田)”で二人が9アンダーで並び、プレーオフ。4ホール目(18番)、4.5メートルのバーディーパットを石川が外しパーのあと、薗田は入れれば勝ちの4メートルを1メートルオーバーさせ、返しもカップに蹴られて外す、信じられぬ”3パット”。一瞬、激闘に冷水をぶっかけたような幕切れとなりました。しかし、勝ちは勝ちです。二人の激闘は歴史の1ページを飾りましたが、石川遼はあの中日クラウンズで「58」を出して優勝した5月以来の今季2勝目(通算8勝目)。大会連覇で賞金ランキングでも6000万円を超えてトップに立つ貴重な1勝になりました。
 
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 母校・杉並学院高では2年先輩の薗田ですが、プロでは石川が2年先輩。薗田はツアー1年目のルーキー。石川は3年目で通算7勝も挙げ、賞金王にもなっています。海外の全メジャーも経験済みというこの”差”は、歴然としていました。 最終日2位グループに3打差をつけてスタートした石川でしたが、いきなり1番をボギーにしてつまずきました。3番のパー5をとりましたが、すぐ5番で左の林に打ち込んでまたボギー。一組前で前半3バーディーで追い上げた薗田に逆転される展開でした。大会連覇を目指す石川は、トップで逃げるゴルフの難しさを痛いほど味わったでしょう。
 後半は10、11番を連続バーディーとしましたが、12番は第1打を左の林に入れてまたボギー。スコアを伸ばせないまま17番まできました。この時点で2打リードしていた薗田が、18番をボギーにして1打差になったことを知ります。「消えかかっていた闘志が、一気にまた燃え始めた」(石川)。
 

随所でスーパーショットをみせた石川遼のドライバー。(フジサンケイ=富士桜CC)= 写真提供:日本ゴルフツアー機構
随所でスーパーショットをみせた石川遼のアイアン。(フジサンケイ=富士桜CC)= 写真提供:日本ゴルフツアー機構

 石川の本領はここからでした。気合を入れて打った18番の第1打が、フェアウェイ左のバンカーにつかまります。すぐ先にアゴがあるちょっと厄介なライ。ピンまでの距離は176ヤードです。手にしたクラブは8番アイアン。この週、練習のはじめには必ずバンカーに入って8番アイアンでインパクトのチェックをやったクラブです。練習の効果はてきめんでした。低いアゴはものともせず石川のフルショットは、高く舞い上がって、大勢のギャラリーが待つ18番グリーン、ピン1メートルにピタッと落ちて止まりました。強かったころのタイガー・ウッズがよく見せたベタピンのスーパーショットでした。フェアウェイバンカーからこの距離感!。このバーディーで一気に2打縮めて薗田に追いつき、プレーオフへともつれ込んだのです。
 
 「18番のバンカーからのショットと、バーディーパットは、いままでにないくらい震えました。自分との戦いに勝てたという思いです」(石川)。プロ3年目、国内外で数々の修羅場を体験してきた石川の底力を見たといってもいいでしょう。
プレーオフの最後、4メートルを3パットして自滅した薗田は「経験の差ですね」と、唇をかみました。「先輩との一騎打ち。すべての視線が僕と先輩のショットに注がれていた夢のような時間。いつまでも続いてほしいプレーオフだった」と遼がいえば、「僕の中では夢に描いたこの対決。そこで僕が勝つことを夢みてきたけど、自滅に終わったのは悔しい」と峻輔。ジュニア時代から切磋琢磨してきた二人が味わった、勝負の世界の厳しい掟(おきて)でした。
 

2年後輩の石川遼とのプレーオフ対決で敗れた薗田俊輔。しかし大型プレーヤーの今後は楽しみ。
2年後輩の石川遼とのプレーオフ対決で敗れた薗田峻輔。しかし大型プレーヤーの今後は楽しみ。

 08年1月10日、16歳でプロ入り宣言をした石川遼。その同じ春に明大に進学した薗田峻輔は、昨年2年在学中にプロ転向を決意しました。後輩石川のプロでの活躍があったからです。ツアールーキーの今年、薗田はツアー5戦目(ミズノよみうり)で初優勝を挙げ、長嶋茂雄招待セガサミーカップでもプレーオフ負けを経験するなど、プロでは遅れをとった石川をじわじわと追い上げている大型選手であることは確かです。来年はそろってのマスターズ出場を夢見ている二人です。
 
 国内の男子ツアーは確実に若返りの波が高まってきました。昨年賞金王になった石川遼、同2位の池田勇太。それに今年は薗田の台頭で”遼・勇・峻”三つ巴の様相が盛り上がってきました。目下、石川が賞金レース1位に立ち、5位に薗田。池田は12位につけています。藤田寛之、谷口徹ら”アラフォー”の頑張りも目立っていますが、大きな流れは完全にヤング勢に移ってきました。
 
 今週は「現代キャピタル招待日韓プロゴルフ対抗戦」(10~12日、韓国・済州島)で日本チームの一員として石川遼、池田勇太、薗田峻輔のトリオも参加します。大会は青木功キャプテンの下、メンバーは10人。04年以来2度目の開催です。国内ツアーは休みです。