オーガスタは征服できる!外国特派員クラブに招かれた松山英樹、強い海外志向を示す

日本外国特派員クラブの昼食会に招かれメモ書きの英語で挨拶する松山英樹(東京有楽町・外国特派員クラブ)
日本外国特派員クラブの昼食会に招かれメモ書きの英語で挨拶する松山英樹(東京有楽町・外国特派員クラブ)

 日本プロ日清カップで4打差をひっくり返されて大魚を逃がした松山英樹(21)が、一夜明けた20日、外国特派員クラブ(東京・有楽町)の昼食会に招かれ、内外の記者からインタビューを受けました。敗戦の悔しさも見せず「自分の目標は海外メジャーで勝つこと。まだマスターズしか出ていませんが、オーガスタでは勝てる要素はある。米ツアーは早めに行って技術を磨きたい」と、世界のメジャー制覇に自信をのぞかせる心意気を披露しました。インタビューの端々で、米ツアー志向は想像以上に強いことをにおわせ、石川遼を追って来年にも日本にサヨナラするのではーとさえ思わせる会見でした。外国特派員クラブからの招きは、最近では02年の尾崎将司、05年宮里藍、09年片山晋呉、11年石川遼らが招かれており、それに続く松山英樹もスタープレーヤーの“勲章”をもらったというところでしょうか!

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日本プロ日清カップ、4打差のトップで出た最終日、よもやの逆転を喫して2位タイにとどまった松山英樹(千葉・総武CC総武コース)
日本プロ日清カップ、4打差のトップで出た最終日、よもやの逆転を喫して2位タイにとどまった松山英樹(千葉・総武CC総武コース)

 政財界・芸能・スポーツ界を問わず、話題の人を招いてインタビューする特派員クラブの昼食会。濃紺のジャケットにネイビー・グリーンのストライプのネクタイをキリリと締めた英樹は、有楽町駅近くのビル、20階にある特派員クラブダイニングルームの会場に12時半に登場しました。ほぼ満席、約120人が集まったダイニングで、スズキのグリルを主にしたシーフッドランチをメディアと一緒に楽しみました。午後1時過ぎ、司会者の紹介のあと、英樹はマイクの前に立ち、メモ書きされた英文の挨拶をしました。

 「Hello!my name is Hideki Matsuyama~」で始まったスピーチ・・

「こんにちは。松山英樹です。きょうは、尾崎将司選手や宮里藍選手のような偉大なプレーヤーに次いでご招待をいただいたことを光栄に思います。また、多くの大学関係者や友人が住む東北を襲った、東日本大震災を、継続して世界に報道していただき、重ねてお礼申し上げます。ご存知のとおり、私は先月上旬にプロ転向を表明しました。私を応援、支援してくださる多くの方に少しでも恩返しができるよう、ベストを尽くして参る所存です。あらためてありがとうございます」

 最後のころは、声が小さくなるほど慣れない英語を発音して一汗かきました。そしてさっそく内外の記者から通訳を通して矢継ぎ早の質問です。

Q「この一年、まだ東北福祉の大学生でプロツアーに参加してますが、来年卒業したらどんなプロになりますか?」

松山「あと一年近く両方で頑張りますが、卒業後のことは、まだ何も考えていません。ただプロとしては、海外メジャーに勝つことが自分の目標なので、それに向けて練習、努力を惜しまず、世界の舞台で戦えるように早くなりたいです」

Q「マスターズで一昨年はローアマに輝きましたが、オーガスタの最初の印象はどうでしたか」

松山「行くまではとてつもないコースをイメージしていましたが、行ってみて最初の印象は、“大したことないな”と思いました(笑)。でも試合をしてみると、コースもグリーンも傾斜がきつくて、やっていけばいくほど難しくなってきました・・。昨年はシルバーカップ(ローアマ賞)より16位以内(翌年の出場権)=今年からは12位以内に変更=を目指してやったのですが、パッティングが狂ってきて最終日にスコアを崩してしまった(80をたたきローアマも逸す)。ローアマを逃がしたことより、16位以内に入れなかったことの方が悔しかったです」

Q「一昨年、東北の大震災は?」

松山「あの日、僕は大学の合宿でオーストラリアにいてテレビで見たのですが、映画みたいなすごいシーンで、このニュース、ホントかな?と思いました。帰ってきたら寮の自分の部屋にも入れず、電気もつかない。仙台もいままでと風景が全く変わっていて衝撃をうけました。1ヵ月後にマスターズを控えていたのですが、“行けるのかな”と不安でした。でもみなさんのバックアップで出場でき、ローアマになる活躍ができました。みなさんがすごく喜んでくれた。自分が頑張れば、多くの人を感動させ、勇気ずけられるんだと、初めて思いしらされました。ゴルフをしていく中で、そういうことを忘れたらいけないなということを強く感じました」

Q「世界のメジャーで日本人の勝者はまだいないのですが、その第1号になれると思うか?」

松山「メジャーで日本人が勝っていないのは、何とも思いません。自分はメジャーはまだマスターズしか出ていませんが、勝てる要素はあると思います。オーガスタはラフがなくてグリーンは硬くて速い。ティーショットは少しくらい曲がってもいい。その他を極めていけば勝てるんじゃないか思います。いまの自分に足りないのは、パターの精度とバリエーション。それにはアプローチの精度も大事。アプローチがよくなれば、パッティングも楽になりますから。メジャーに勝つためには、こういうことが大切だと思います」

内外の記者からの質問に、通訳(左)を交えながら答える松山英樹(外国特派員クラブ)
内外の記者からの質問に、通訳(左)を交えながら答える松山英樹(外国特派員クラブ)

Q「ゴルフが正式種目となる次にオリンピックへの思いは?」

松山「オリンピックは3年後ですね。そのときのワールドランキングを上げて、10位以内に入ってれば出られるらしいですから、それを狙いたいですね。3年後の僕はどういう選手になっているか、予想がつかないのでよく分かりません。出たい気持ちはありますけど・・」

Q「世界で戦うためにも、プロを教えるコーチをつける考えはないのか」

松山「いままではコーチは父親でしたからね。大学に入ってからは特にいないですね。いずれアメリカへいくときは、コーチは必要だと思います。でも、コーチのいうことをすべて受け入れるのではなく、自分の意見も入れていった方がいいのかなといまは考えています。いまはまだコーチをつける気持ちはないです」

Q「東北福祉大の阿部靖彦監督との関係は?」

松山「阿部監督とは高3のとき初めてお会いしました。自分は高校を卒業してプロになろうと思っていたのですが、監督が愛媛まで来てくれて“いますぐプロになってもそこそこの選手にはなれるだろうが、トッププレーヤーになりたいなら、まずウチに来た方がいい”といわれた。それで大学進学を決めたんです。大学では監督から直接のゴルフの指導はあまりないのですが、調子のいいときと悪くなったときの差を、一言いってもらえる。それが立ち直れるきっかけになるんです。どうしたらいいか分からないとき、いろいろアドバイスしてもらえる。そうしたことが大きいんです」

Q「アマチュアゴルファーへ、飛ばす秘訣を教えてもらえますか?(笑)」

松山「飛ばす秘訣ですかぁ~。飛ぶクラブに変えるのが一番早いですね(笑)。体を柔らかくすれば飛ぶと思いますよ」

Q「子供たちへのアドバイスをするとしたら?」

松山「子供たちが僕のプレーを見てゴルフを始めてくれたらうれしいですね。自分はゴルフしかやってこなかったですけど、子供にはいろんなスポーツをまずやってほしい。例えば野球をやれば、体力がつきますし・・。その上で、自分が一番やりたいスポーツを選んでもらうのが一番ですね」

Q「米ツアーへ挑戦するのはいつごろになりますか?」

松山「アメリカには早めに行きたいです。遼が、今週は10位に入ったそうですが、前半戦苦しんでいますね。あれを見ているとアメリカと日本の環境はだいぶ違うのかなと思います。でも、自分もそういう中で早く技術を磨いていきたいです」

Q「もう記者会見には慣れてきたでしょうが、今日のように英語でスピーチしたり、こういう会見はどうですか?」

松山「記者会見には慣れてきましたけど、英語では倍ほど緊張しますね。ゴルフをやるより緊張します。でも、英語は勉強しなくてはいけないですね。話せれば、分からないことを聞けるのが大きい。そう思いながら、もうずいぶん時間が経ってしまいました(笑)」

司会者:「きょうはどうもありがとうございました」

 昼食のあと、Q&Aは約50分。タマコ・タカマツのすばらしい通訳で会見は和気あいあいで終わりました。ホットした表情の松山プロに、外国特派員協会から「名誉会員」の
会員証が手渡されました。ルーキーイヤーながら今季プロツアー4戦で優勝1回、2位2回、10位1回で、まだトップテンを一度も外していません。すでに4994万6000円を稼いでダントツの賞金レース1位を走っています。世界ランクは前週の92位から80位にランクアップ。日本人では藤田寛之(62位)に次ぐ2番目の上位です。石川遼は114位(いずれも5月19日現在)。世界をにらみながら戦う英樹。遼をもしのぐ“大物”を感じさせます!