イ・ボミ(韓国)、賞金女王と男女史上歴代最高・2億円超を獲得!!女子シード権争い、柏原明日架、2万3167円差で生き残る!

圧倒的な強さで今季7勝。念願の賞金女王を決めたイ・ボミ(韓国)
圧倒的な強さで今季7勝。念願の賞金女王を決めたイ・ボミ(韓国)

日本ツアー5年目のイ・ボミ(27=韓国)が、圧倒的な強さで2週連続、今季7勝目の快挙。初の賞金女王決定です(大王製紙エリエール・レディス=11月19~22日)。今季の女子ツアーは残り1試合となり、これは出場選手が上位に限定されるため、賞金女王と賞金シード50選手が確定。シード線上にいた選手の泣き笑いのドラマも終わりました。嬉しい初シードは青木瀬令奈、堀琴音、永峰咲希、松森彩夏、柏原明日架ら若手8人。シード喪失組は馬場ゆかり、比嘉真美子、堀奈津佳ら13人。シード復帰組の若林舞衣子、金田久美子、三塚優子も合わせて来季のフィールドの大綱が決まりました。落選組は、12月の最終予選会に出て″敗者復活”にかけます。

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ムダのないスイングで安定したショットを放つイ・ボミ(韓国)
ムダのないスイングで安定したショットを放つイ・ボミ(韓国)

人気が続く女子プロは、全37試合の長丁場を今週で終了しますが、頂上に立ったイ・ボミは、すでに2億2581万7057円の男女あわせて国内歴代最高額を稼ぎ出しています。過去、樋口久子、岡本綾子、ト阿玉、不動裕理の4人しか成し遂げていない年間7勝も達成。好景気に酔いしれました。シード落ちの選手とは、天と地ほどの格差。これが勝負の世界の厳しさです。

昨季も年間3勝しているイ・ボミが今季は7勝も挙げ、また一段階段を上がった格違いのゴルフでした。チャーミングな笑顔が可愛いボミですが、ゴルフの腕前は誰にも負けないうまさを秘めています。見た目はそんなにパワーヒッターに感じませんが、若い時から鍛え抜かれた足腰の強さをバックに、曲がらず260ヤード超は飛ばす飛距離。それにも増してキレのいいアイアンショット。正確で距離感のいいショットをピン目がけて次々と放ちます。さらに計算されつくしたコースマネージメント。今回の試合も4日間、4つのパー5で1度も2オンを狙わなかったという冷静さ。ムリなリスクを避けて、それでいてパー5ホールでは8バーディー、ボギーなしの好スコアを残すうまさです。

日本人最上位の賞金ランク5位の渡辺彩香(あやか)。飛ばし屋だが今季2勝。
日本人最上位の賞金ランク5位の渡辺彩香(あやか)。飛ばし屋だが今季2勝。

今回、5打差の2位で終わった渡辺彩香と鈴木愛。「とにかくボギーを打たない人。こっちが伸ばしていかないと勝てない」(渡辺)。「やっていてボミさんに勝てそうな感じがしない。何の差なのですかね。分からないです。でも、もうそろそろボミさんを止めないとね」(鈴木)・・。かつては男子の谷口徹の帯同キャディーだった清水重憲キャディーが、いまボミの専属。ボミから厚い信頼をもらっていますが、最終日17番(パー4)では清水キャディーから「ここはピン右サイドだけOK」と指示され、セカンドは右手前のラフに外しましたが、そこからの20ヤードをチップインしてバーディーにつなげました。「いつも清水さんにはいいアドバイスをもらって助かっています」(ボミ)といっていますが、マネジメントを指示通りに実行できる″腕”を持っているボミのゴルフが、素晴らしいのでしょう。

ティーグラウンドで方向を確認するイ・ボミ(韓国)。日本での人気も急上昇。
ティーグラウンドで方向を確認するイ・ボミ(韓国)。日本での人気も急上昇。

この日のボミのスパイクの靴ひもは、右が青で左が赤。それぞれ日本(青)と韓国(赤)を表しているといい「私が日本でこんなにたくさんの応援を受け、モノを戴けるのが信じられないんです。私もこのくらい日本が好き!という気持ちで、左が赤で韓国、右の青が日本のカラーです・・」とボミ。来日した当時は「2年くらい日本で頑張ったら、米ツアーでプレーしてみたい」と語っていたボミですが、いまでは「日本ツアーは試合数も多くてコースコンディションや練習環境もいい。ツアーの雰囲気も大好き。だからずっと日本でプレーしたい」と、方向転換しています。身に着けるゴルフウエアもセンスがよくて、日本での人気度はますますヒートアップです。待望の日本での賞金女王もとっていまや日本ツアーの第一人者。来季は「アメリカには2回くらい出たい。それと韓国の試合にも出たい」と、幅を広げています。余裕でしょうか。

しっかりした足腰を土台に、正確なショットが身上のイ・ボミ。
しっかりした足腰を土台に、正確なショットが身上のイ・ボミ。

優勝インタビューで「来年は日本で10勝?」と水を向けられると「ハッハッハ」と笑い飛ばし「来年も1勝できるように頑張りたいです」と慎重発言。ここが母国ではない日本であることで、常に周囲への気配りを忘れないボミです。

2億円超を稼ぎ出した頂点のボミのほか、1億円を超えた4人はすべて外国人選手。2位テレサ・ルー(台湾)、3位アン・ソンジュ(韓国)、4位李知姫(韓国)。その一方で食うか食われるかの厳しい勝負の世界を味わっている選手たちも少なくありません。今季の50位以内のシード選手のボーダーラインは「1791万6000円」でした。賞金ランク50位にいたプロ2年目の19歳・柏原明日架が、最終9番でボギーをたたき通算2オーバーでホールアウト。「もうダメかなと思った」(柏原)のに、2万3167円差で辛うじて50位の最下位に生き残りました。初シードをつかんだ柏原(今年は最終予選会から全日程の半数強に出場)「最後まで諦めなかった結果でうれしい。来年は自分のゴルフを確立させたい」とキッパリ。10月の日本女子オープンでは優勝争いの末、4位と健闘した19歳は、楽しみな来季を早くも見据えていました。

13年の大ブレークから今年は一転して予選落ち続き。シード落ちした比嘉真美子。
13年の大ブレークから今年は一転して予選落ち続き。シード落ちした比嘉真美子。

50位ラインを争って柏原に敗れたのは福田裕子。この試合31位で72万円の上積みに留まり、柏原を上回ることができませんでした。「負けました。シード権のラインばかりみて戦い過ぎた。でも、やるだけやったから仕方ないです」と、無念の表情。他にも12年連続12回目を逃がした馬場ゆかり、3年連続3回目を逃がした堀奈津佳らがシード落ちでしたが、中でも″天国から地獄〝の悲哀を味わったのは、プロ4年目の比嘉真美子です。

13年には日本女子プロ選手権でイ・ボミと6ホールのプレーオフを戦って敗れるなどの大ブレーク。念願の全英リコー女子オープンにも初出場して堂々7位。国内ツアーでは10代で2勝を挙げる快挙でLPGA

将来を嘱望された若手NO1の比嘉真美子。今季のどん底から立ち直れるか?
将来を嘱望された若手NO1の比嘉真美子。今季のどん底から立ち直れるか?

新人賞、日本プロスポーツ新人賞、GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーなどを受賞。14年秋には米ツアーのQスクール(予選会)にも挑戦(落選)するなど、多くの経験を積んで前途を嘱望された比嘉が、今季は大暴落。32試合に出て予選落ち23回、棄権1回。5月から10月までの間、17試合連続予選落ちでした。今季

の獲得賞金は383万余というどん底。賞金ランク95位で3年連続3回目のシードを逃がしました。
「今年はシード確保するイメージがずっとなかった。シーズン後半から少しずつよくなってきているので、QTで自分を信じて出直します」と、コンメントしています。前途洋々から奈落に落ちたような比嘉。厳しいQTで這い上がって出直せるかどうか。注目です。

華麗なスイング、安定したゴルフで今季5勝。イ・ボミを追ったが、賞金2位に留まったテレサ・ルー(台湾)
華麗なスイング、安定したゴルフで今季5勝。イ・ボミを追ったが、賞金2位に留まったテレサ・ルー(台湾)

米ツアーを主戦場とする横峯さくら、有村智恵らも日本ツアーのシード権は喪失。諸見里しのぶは、昨年に続き今季もシード権を確保できませんでしたが、「QT(予選会)には出ない」と、来季の休養を表明しています。2年来悩まされている肋(ろく)軟骨痛が完治せず、来年1年は休養に充てる決断をしたとのことです。来季は所属するダイキンオーキッド(開幕戦)と、出場資格を持っている日本女子プロ、日本女子オープンなど数試合のみの出場となりそうです。

今季の女子ツアーは37試合で賞金総額は33億3300万円と史上最高額を更新していました。男子ツアーの25試合に比べても、人気の女子ツアーを実感できます。今週の最終戦「LPGAツアー選手権リコ

賞金女王を決めたイ・ボミ(韓国)とは、8000万円強の大差をつけられたテレサ・ルー(台湾)
賞金女王を決めたイ・ボミ(韓国)とは、8000万円強の大差をつけられたテレサ・ルー(台湾)

ー杯」(宮崎・宮崎CC)でツアーを締めくくりますが、日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「女子ツアーはここ数年、毎年のように試合数が増え、賞金額もアップしています。環境を整えていただいているスポンサーの方々に感謝また感謝です。今季はイ・ボミさんの安定感が抜きんでていて″独り勝ち〝状態でしたが、日本選手も底力は上げてきています。潜在能力を秘めた若い子たちの頑張りに期待したい」と、話しています。今季の日本勢の最上位は、渡辺彩香の賞金5位(9866万6583円=11月23日現在)でした。今週、最終戦での激戦に期待しましょう。