今年のゴルフシーズンも国内外ともほぼ全日程を終了しました。話題は尽きぬ1年でしたが、米女子ツアーに挑戦した日本ナデシコ勢はどうだったのでしょうか? 優勝こそありませんでしたが、有村智恵を除く5人が、賞金ランク80位以内に与えられる来季のシード権を獲得。前年シード権を失っていた宮里藍、宮里美香の″両宮里”がシード権を奪回するなど復調の兆しをみせました。しかし、米女子ツアーは依然として韓国勢が圧倒的な強さをみせ、今季も18歳で最年少賞金女王に輝いた韓国生まれ、ニュージーランド育ちのリディア・コーを含め、朴仁妃(パク・インビ=27)、金世煐(キム・セヨン=22)ら賞金ランク10位以内に5人が名を連ねる一大勢力を誇っています。2016年の日本勢は、どこまでこの厚い壁を打ち破れるでしょうか?
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来季のシード権を確保したのは賞金ランク28位に入った宮里美香をはじめ、横峯さくら、野村敏京、宮里藍、上原彩子の5人。この日本勢のなかでの活躍頭は宮里美香(26)です。ツアー33試合中、23試合に出場してトップ10には5度、名を連ねました。最高は6月のアーカンソー選手権の2位。最終日、一時はトップに並ぶなどの好調なゴルフをみせましたが、韓国のチェ・ナヨンに2打及ばず、3季ぶりの米ツアー優勝を逃がしました。シーズンを通して安定したゴルフを続け、予選落ちは開幕のコーツ選手権と7月の全米女子オープンの2試合だけ。「パットの調子がずっとよくて、ゴルフのリズムが変わった」(美香)と、パットの復調が好成績を挙げられた原因だったと語っています。平均パット数は28.73で年間で2位につける好調さでした。
美香は、シーズン最終戦のCMEツアー選手権では、3日目の14番(パー5)でドライバーのティーショットが、飛んできた鳥に命中する珍アクシデントに見舞われました。鳥は死んで落ち、ボールも右に曲がって150ヤードほどしか飛ばずにバンカーに落下。精神的なダメージもあったとかで、第2打を池に入れダブルボギーを喫しました。最終日も立ち直れず、4オーバーの62位に終わりましたが、今年の美香は″当たり年〝?だったのでしょうか。米ツアー2勝目に届かなかったのが残念でしたが、賞金ランクは28位で58万3141㌦(約7143万円)を稼ぎました。
12月13日で30歳を迎えた横峯さくら。この年になって米ツアー本格参戦で注目されましたが、自身最終戦になったロレーナ・オチョア招待(11月)で自己最高の5位に入る大健闘。今季賞金ランクは44位で獲得賞金は38万2891㌦(約4690万円)をゲットしました。ツアー最終予選会で年間出場権を獲得しての渡米でしたが、開幕戦(コーツ選手権)は、欠場者が出ないと出場できないウエーティングの6番目という状況を知り、慌ててその試合の予選会(マンデー)に出場しましたが、「上位2人」の枠には入れず試合出場ができませんでした。予選会からの初年度のため、140位と優先順位が低かった横峯は、シーズン中もマンデー(その試合の予選会)に回る大会もあって辛い思いもしました。芝や気候や食事など日本と異なる環境への適応にも神経を使うアウェーでの戦いに、よくぞ耐えました。昨年12月に結婚したメンタルトレーナーの夫、森川陽太郎さん(34)が米国に帯同。二人三脚での転戦が、さくらを支えたといってもいいでしょう。2月の開幕から序盤戦は苦戦が続き、6月当初までに5度の予選落ちがあったものの米ツアーに慣れてきた夏場以降は、予選落ちはただ1試合(エビアン選手権)だけ。09年の国内賞金女王に輝いている実力者らしいゴルフを徐々に取り戻したのはさすがでした。
自己最高の5位に入ったロレーナ・オチョア招待では、3日目にはイーグルを奪うなどでスコアを伸ばし、首位の朴仁妃に5打差の5位につけ初優勝を視界にとらえるゴルフをみせました。結局、朴には追いつきませんでしたが、最終日も68で回り、一時は首位と2打差に迫るところまでいく通算9アンダーの5位は「今年の集大成。ちゃんと上を目指してやれたことは大きな収穫」(さくら)と、手応えをつかんだ最終戦になりました。「疲労がピーク。ツアー最終戦(CMEツアー選手権)は出るつもりでしたが、休むことにしました。私の今シーズンはこれで終わり。いい締めくくりができたと思う」と、さくら。苦労続きだった米ツアー参戦初年度を尻上がりのゴルフで終え、シード権も確保できたのは及第点でしょう。今年春、渡米に際して「ゴルフともっと向き合いたいから決めた。でも米ツアーは1年だけにするつもり。まだ最終的には決めてませんが・・」と、期間限定の挑戦であることをほのめかせました。かって横峯は「30歳になったら引退」を示唆したこともありますが、米ツアー初年度のいい終わり方は、来季2年目挑戦への闘志が、いま一度蘇ったのではないでしょうか。
前年賞金ランク86位でシード権を失っていた宮里藍。今季は終盤戦でようやく課題のパットに灯りがみえて辛うじてシード権を取り戻しました。しかし、1年を振り返ってみると、今年も苦戦続きのシーズンでした。それまで17位が最高で、特に6月以降のトップシーズンは、出場9戦で予選落ち7回。9月に帰国して出場したミヤギTV杯ダンロップと日本女子オープンも連続して予選落ち。今季もシード落ちが危ぶまれましたが、終盤の粘りでなんとか踏みとどまりました。最終戦のCMEツアー選手権にはギリギリのところで出場権をとって最後のトライ。課題だったパットの復調が命の綱。「この試合で修正したラインの読みがうまくいった」と、2日目には3㍍前後から5㍍、7㍍のパットも次々と沈め、5月のキングズミル選手権以来、半年ぶりの60台(67)。この日は26パットと強かったころのゴルフで8位浮上。久々のV戦線を経験して「ああ、この緊張感ね」と藍スマイルでした。最終ラウンドは一つスコアを落とす″失速”が残念でしたが、通算8アンダーで今季自己最高の14位に食い込み、賞金ランキング80位以内(77位)を確保できたのです。近年、低迷の大きな要因となっていたパッティングが、シーズン後半からようやく改善され、安定しているショットとかみ合ってきました。来年6月には31歳になる藍。「来年はシーズン初めから優勝争いに参加したい」と、まだまだ″前進〝へ自信をみなぎらせていますが・・・。
このほか、野村敏京(23)、上原彩子(32)は、上位こそありませんでしたが、着実なゴルフで連続してシード権をキープしました。ランク66位の野村はサイムダービー・マレーシアの10位が最高で、マラソンクラシックも11位でした。来季は米ツアー3年目の飛躍が期待されます。ベテランの域に入った上原彩子は、夏場の7月以降、5連続予選落ちなど12回の予選落ちがあって最高順位は全米女子オープンの20位。賞金ランキングはギリギリ79位で滑り込みのシード権確保でした。メジャーになると好成績を出す勝負強さを発揮して、来季も米ツアープレヤーとして戦います。
今季もシードのなかった有村智恵(28)は8試合の出場で4試合予選落ち。アーカンソー選手権の29位が最高という成績で賞金ランク132位にとどまりました。来季は米ツアー4年目になりますが、12月に受験した来季への最終予選会(5R)は通算2オーバーの43位。20位までに与えられる優先出場権は獲得できず、21位から45位には制限付き出場権が与えられます。しかし、他の選手の欠場が多い大会などで出場機会を得られるだけなので、有村は来季、下部ツアーに専念する意向のようです。3年間、花の咲かないままの有村ですが、粘り強くまだ米ツアー挑戦をあきらめません。
もう一人、アマチュアの永井花奈(18)=東京・日出高3年 =が米女子ゴルフのツアー最終予選会(QT)に挑戦しましたが、4Rで通算13オーバーの139位で最終ラウンドに進めませんでした。
日本勢の米ツアー優勝は、12年の宮里美香以来ありません。来季も強力な韓国パワーにどこまで立ち向かえるでしょうか。その厚い壁を打ち破るのは、美香かさくらかー?!