海外メジャー「全米オープン」で叩きのめされた石川遼(32)が、帰国第1戦の国内ツアーで2年ぶりのお見事な逆転優勝。ツアー19勝目を挙げました。舞台はツアー選手会主催の「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」(栃木・西那須野CC)。優勝賞金は1000万円と“小粒”でしたが、先頭に立って実行委員長を務めた石川遼は、予選ラウンドの9ホール、ピンマイクをつけてプレーしインターネットテレビ「ABEMA」の中継に生の声を届けるなどの大サービスを演じました。随所で見せた着実なプレースタイルもひと皮むけたうまさを感じさせ、ひとしおの19勝目でした。
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2年ぶり、19勝目を狙う石川遼が最終日、20アンダーの単独トップに立って残り3ホールに突入しました。1打差で、ともに若い21歳、金子躯大と田中祐基やH・W・リュ―(韓)らが追う首位争いは2打差に7人がひしめく大混戦模様でした。“32歳の遼と若手との対決”となった今の男子ツアー。もう一人、単独首位から出た河野祐輝は、15番パー4で誤球騒ぎを起こし「9」を叩いて奈落に落ちていました。大人になった石川の本領は、この混戦から抜け出す最終6ホールで鮮やかでした。11番パー5で右の林へ曲げ、ロストボールの衝撃(ボギー)を受けた石川ですが、13、14番でピンに絡ませて連続バーディーで盛り返すと、16番パー5では2打目をグリーン手前に無理をしません。3打目で着実に寄せた2㍍を沈めて再び単独トップの21アンダー。続く17番148ヤードのパー3ではPWでピン80㌢につけるスーパーショットが見事でした。この連続バーディーで後続の息の根を止めました。2打差をつけて18番ティー(パー4)に立った石川は、ドライバーを捨ててユーティリティーを手にします。左サイドは一面の池。左は絶対禁物の危険なフィニッシュホールなのです。それでも1打目は僅かに右のラフ。石川はセカンドのライをみて「2打差あるのだからここはボギーでいい」と思ったという。197ヤードの2打目も手堅くグリーン手前90ヤードへ安全な“刻みショット”でした。3オンさせた3㍍のパーパットは外れて“予定通り”のボギーフィニッシュ。上がり6ホールで4バーディーに1ボギー。最後一つ落として21アンダーの逆転優勝は、こうして生まれました。2022年11月の「三井住友太平洋マスターズ」以来となるツアー通算19勝。「お~、19勝目か」と実感をこめて優勝インタビューを締めくくった石川遼。そのことばのうらには『25勝の永久シード』がちらついたのかもしれません。
ガンガン攻めまくる若いころの石川とは、特に最近は様相が一変しました。世界の最高峰「全米オープン」に出かけタフなコースや設計に8度ももまれて苦労して得た教訓がスイングも含めて“遼のゴルフ”を進化させてきたのでしょう。プレースタイルが手堅くなって、強さが増したように思えます。2週前の国内メジャー「BMWツアー選手権森ビル杯」では岩田寛とのプレーオフに敗れましたが、その雪辱も混戦を制して果たしました。
★石川遼のコメント
「最終日はすごく苦しい一日だったが、11番のロングでボギーを打ってから、気持ちを切り替えられた。バックナインは特に意識してやった。それからいいプレーができたかなと思う。3日目、4日目はいまひとつ思うように運べなかった部分もあったが“貯金”がモノをいった。ショットの感触も悪くなかった」
この春には大会実行委員長就任が決まって、以後コースへ足を運んだりスタッフミーティングも重ね、選手会主催ならではの開催へ意見をまとめたという。予選ラウンド2日間は自ら後半9ホールをピンマイクをつけてプレーする初の試みを実行。臨場感溢れる佐藤賢和キャディーとの会話を視聴者に届けました。「プレー中のリアルな選手の声を聞いてもらい、映像を通して楽しんでもらえたらうれしい。この大会も4回目で育ってきたかなと思う。ゴルフを楽しくファンにお届けできるよう選手会も頑張ります」と遼。実行委員長自ら優勝を勝ちとれた意義をかみしめていました。
(了)