チャリティー活動、目立つ日米の差。東北関東巨大地震で戸惑う日本ツアー!

今年は開催が中止となったヤマハレディスの葛城GC1番ティー。
今年は開催が中止となったヤマハレディスの葛城GC1番ティー。

 東北関東大震災は各方面に多大な影響を及ぼしています。被災者への支援の輪はどんどん広がっていますが、プロゴルフ界のダメージも計り知れません。3月4日に開幕した女子プロツアーは開幕戦1試合を消化しただけで中止が相次ぎ、次の試合がいつ行われるのか不明です。男子プロツアーは開幕が遅く、4月14日(東建ホームメイト杯)ですが、それも予定通り開幕するかどうか、未定です。試合がなくなった女子プロたちは、各地で募金活動を行ったりしていますが、募金内容もさまざま。ただ試合を延期すればそれでいいのでしょうか?動揺する日本ゴルフ界ですー。
 
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毎年桜満開の葛城GCだが、今年のヤマハレディスは中止になった。
毎年桜満開の葛城GCだが、今年のヤマハレディスは中止になった。

 3月11日午後2時46分、巨大地震と大津波は起きました。女子ツアー開幕第2戦のヨコハマタイヤ・プロギア・レディス(高知・土佐CC)は初日を終えようとしているときでしたた。大会会場から見下ろす高知沿岸部にも津波は押し寄せ、避難勧告が出される事態でした。混乱する会場で翌朝、2日目以降の試合中止が決定しました。その12日には巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所の原子炉で水素爆発が発生する騒ぎとなり、日本列島は凍りつきました。目を覆いたくなる被災地の惨状。毎日増えていく被災者の数・・。ゴルフツアーどころではなくなりました。
 
 激しい揺れを感じた東京も、大きな被害こそありませんでしたが、電車、電気、商店街、食料品等々、その動きや流通はまだ正常ではありません。そんな中、女子プロゴルフ協会は第2戦のプロギアに続き第3戦のTポイントレディス(18日~20日鹿児島高牧CC)、さらには1週おいて開催予定のヤマハレディス(4月1日~3日静岡・葛城GC)も相次いで中止を発表しました。続く第5戦、スタジオアリス(4月8日~10日兵庫・花屋敷GC)についても「スポンサーと協議していますが非常に難しい判断」(小林浩美会長)としていて、開催は厳しい状況のようです。どこまで自粛したらいいのか。毎週試合開催が予定されている女子日程に加えて、14日には男子ツアーの開幕日が迫ってきます。
 

東北高出身の有村智恵。東日本大震災、被害者支援の募金活動を先頭にたって行った。
東北高出身の有村智恵。東日本大震災、被害者支援の募金活動を先頭にたって行った。

 試合そのものも実施ムードにないのですが、それにもまして試合前日に行われるスポンサーを対象にしたプロアマ大会や前夜祭をやりにくいのが問題なのです。プロトーナメントは、前夜祭を含めたプロアマ大会が(スポンサーに対して)大きな意味をもっています。つまりプロアマ大会や前夜祭をなくしてトーナメントを行うのは企業としては面白くありません。幸か不幸か、女子プロは前半戦東北地方での試合はありません。「遠く離れたところならぼつぼつ始めてもいいのじゃないか」との声もありますが、4月中はなかなか開催に踏み切る主催者がないかもしれません。米国などなら、チャリティー試合にして逆に積極的に支援に参加する方策をとることも考えられますが・・。いまのムードで中止試合だけを4月いっぱいまで増やすと、6~7試合がキャンセルされることになりますから、全34試合から大幅減でのシーズンとなり、賞金女王争いなどにも微妙な影響を及ぼすことになります。
 

鹿児島の旧本拠「さくらアカデミー」の寮を、大震災の被災者に開放するという横峯さくら。
鹿児島の旧本拠「さくらアカデミー」の寮を、大震災の被災者に開放するという横峯さくら。

 試合を奪われた女子プロたちは、各地でいろいろな被災地支援活動を行っています。20日の日曜日には博多と神戸で2つの集まりがありました。博多駅前では東北高出身の有村智恵や水戸市内の自宅が半壊した川原由維らが音頭をとり、古閑美保、佐伯三貴、北田瑠衣、飯島茜、諸見里しのぶ、馬場ゆかり、馬場由美子、佐藤のぞみ、笠りつ子ら有志11人が約2時間に渡って募金活動、222万7548円の義援金を集めました。神戸では中村香織が旗を振り、茂木宏美、藤本麻子、池内絵梨藻、真梨藻姉妹、桜井有希ら関西ゆかりの約20人が参加。チャリティーレッスン会を行いました。開催を知った東尾理子とタレントの石田純一夫妻も駆けつけて募金に協力しました。
 横峯さくらは、旧本拠で父親の横峯良郎氏が設立した鹿児島のゴルフスクール「さくらアカデミー」を、現在使用していないため被災者に開放する計画だそうです。生徒用の寮設備があり、約30世帯の受け入れが可能だとか。現在は自宅のある宮崎市に「さくらアアカデミー」は新設していますので、この旧施設の開放を思いついたそうです。
 
 日本女子プロゴルフ協会は500万円の義援金を送ることを決め、さらに今シーズンを通して「心をひとつに」のスローガンでチャリティー活動を行うことにしました。男子プロですが、谷口徹は300万円の義援金を日本赤十字社を通じて贈りました。日本プロゴルフ協会は約5000人の会員のうち、被災地に在住していていまだに連絡の取れない会員が何人かいます。義援金の寄贈も理事会で決定し、18、19日は協会事務局員も全員自宅待機にして、震災や原子炉事故に対応する措置をとるなどしました。
 
 海の向こうの米ツアーでも日本の被災地支援のために義援金を募る活動を始めました。
PGATOUR.COMのウエブサイトには義援金申し込みフォームが用意されました。金額に応じて「20ドル」「50ドル」「100ドル」「250ドル」の4種類から選ぶことができる仕組みで、好きな金額を入れる欄もあるなど、社会貢献やチャリティー活動が盛んな米国らしく素早い対応の仕方です。
 その点日本のゴルフ関係者の対応はスケールが小さいです。米国で活躍している今田竜二が先週のトランジションズ選手権で1バーディーにつき1000ドル(約8万円)の義援金を決めましたが、バーディーは2個だけでしかも予選落ち。石川遼は自分のキャラクター商品の売り上げから義援金を捻出すると宣言しましたが、いかにもみみっちい?感じがします。韓国の選手はもっと積極的です。かって日本ツアーで戦っていた米ツアーの崔京周(チェ・キョン・ジュ)は、自らが主宰するファンドから米赤十字に10万ドル(約810万円)を寄付。昨年の日本ツアーの賞金王、金庚泰(キム・キョンテ)も10万ドルを日本ゴルフツアー機構宛に送金、女子の全美貞(ジョン・ビジョン)は1000万円を寄付、被災者に救いの手を差し伸べます。
 
 ちなみに先週行われた米国女子ツアー、「RRドネリー・ファウンダーズ・カップ」(アリゾナ)は、今年新設された大会ですが、獲得賞金は賞金ランクに加算されるものの、選手の手には渡らず、若手の育成などを行うLPGAの資金に全額寄付されます。5位タイスタートから逆転優勝のカリー・ウェブは「日本のファンや日本での仕事は私のキャリアを支えてきてくれた。少しでも恩返しがしたい」と2万ドルのチャリティー金のうち半分を日本の支援に送り、2位のP・クリーマー(米国)らも日本を支援先にしました。また、大会スポンサーは15番から18番を「日本救援ゾーン」に設定し、金曜と土曜は1バーディーにつき100ドル、1イーグルで500ドルを寄付するとし、日曜は1バーディーにつき500ドル、1イーグルで1000ドルを寄付するとしたところ、3日間で53,300ドルの金額となりました。こういう試合には選手は積極的に参加するのがアメリカです。チャリティー活動などには遅れをとっている日本には、十分参考にしていいやり方ではないでしょうか。