“池と風”に弱い日本選手!フロリダで痛い目にあった遼と勇太のマスターズは?

十分な練習を積んで乗り込んだ米ツアーだったが、フロリダの池と風には泣いた石川遼。
十分な練習を積んで乗り込んだ米ツアーだったが、フロリダの池と風には泣いた石川遼。

 「8」と「11」。米国遠征中の我らが遼と勇太がフロリダの風と池に翻弄(ほんろう)されてアーノルド・パーマー招待でも無残な沈没です。4月7日開幕のマスターズに向けて米ツアー5試合で小手調べ中の石川遼は、予選カットのないキャデラック選手権(42位)をのぞいてストローク戦3試合ですべて予選落ち。その間の世界マッチプレーも1回戦敗退というありさま。池田勇太も世界マッチプレーは1回戦負け。フロリダシリーズではホンダクラシックに続いてのA・パーマー招待の予選落ちで、二人ともマスターズへの調整は見事に失敗のまま、本番のメジャーに挑むことになりました。それにしても日本の選手は、池や風にはホントに弱い脆弱(ぜいじゃく)なところをさらけ出した格好です。これではマスターズが思いやられる!?
 
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ど根性の池田勇太をもってしても、フロリダ特有の池と風には"参った!"。A・パーマー初日にはプロ入り自己ワーストの1ホール「11」をたたいて沈没した。
ど根性の池田勇太をもってしても、フロリダ特有の池と風には"参った!"。A・パーマー初日にはプロ入り自己ワーストの1ホール「11」をたたいて沈没した。

 A・パーマー招待(3月27日最終日)はフロリダ・オーランドにあるベイヒル・クラブです。コースはフラットですが、フロリダ特有の池とバンカー。方向の定まらない気まぐれな風が強敵です。まず池に”はまった”のは勇太でした。第1日、前半のインを4オーバーで折り返した池田に地獄の6番(555ヤード、パー5)が待っていました。左サイドの池に沿って大きく曲がるパー5。強風の中、フェアウェイからの第2打が左に曲がって池につかまり、ドロップした4打目、6打目が相次いで池へ。”3池ポチャ”で致命的な「11」をたたいて終戦でした。その初日はプロ転向後の自己ワーストの84(44、40)で最下位に沈み、予選通過はこの1ホールで霧散と消え、翌日ボギーなしの69とやけくそ?のゴルフをみせましたが、100位で予選落ちでした。「2日で15打も違うのは一体何なのか。もっと自分で考えないといけない」と話す勇太の顔が、ゆがんでいました。
 

1週休んで4月7日開幕のマスターズで"変身"できるか?石川遼。
1週休んで4月7日開幕のマスターズで"変身"できるか?石川遼。

 石川遼の洗礼は2日目でした。初日46位の遼の2日目。インスタート、なんとかパープレーで迎えた18番(458ヤード、パー4)でした。グリーン右からフェアウェイ右サイドへ広がる池。ドライバーの第1打は、あきらかに右サイドを怖がったスイングで左へ曲げ、ホール脇の民家の庭に打ち込んでしまいます(OB)。打ち直しはフェアウェイをとらえましたが、3Iでの4打目がグリーン左奥のバンカーのスロープに突き刺さる”目玉”。つま先下がり、左足下がりの難解なバンカーショット。グリーンを越えた奥には池が口をあけていて思い切ったショットができません。何とか深いラフに出しますがまだ乗りません。6打目はラフに負けて2メートル動いただけで脱出できず、結局7オン1パットのダブルスコア「8」が待っていました。この大たたきで予選通過は夢と消えました。
「何でこんなことをやっているのだろう?すべてを台無しにしてしまった。いままで練習してきたことが全部吹っ飛んでしまった」青ざめた顔で遼はうなだれました。池を恐れて自分のスイングができず、逆ダマになっているのです。2日目はさらに悪い77もたたき通算7オーバー、予選通過ラインには遠く及びませんでした。
 
 遼が池や風に泣いたのは、この試合だけではありません。2試合前のキャデラック選手権(フロリダ・ブルーモンスターatドラル)では3Rの3番でドライバーを右に曲げて池ポチャ。ドロップして打った9メートルのパーパットが入りました。18番ではドライバーを池に入れながら13メートルのパーパットがまた入ってなんとか凌ぎましたが、紙一重の綱渡りです。最終日には最終18番でドライバーで池。2Iの第3打も池ポチャの連発でダブルボギーの「6」でした。8ホールでバンカーには実に10回つかまるなどピンチの連続で「78」の大失速。5アンダーの16位からのスタートでトップテン入りも見えていた試合をムダにしました。18ホール中7ホールで池が絡む”モンスター”にやられたとしかいいようがありません。
 

国内最優秀選手の藤田寛之。41歳にして初のマスターズ出場がかなったが、その前哨戦のフロリダシリーズでは米ツアーの"壁"の高さを知った・・。
国内最優秀選手の藤田寛之。41歳にして初のマスターズ出場がかなったが、その前哨戦のフロリダシリーズでは米ツアーの"壁"の高さを知った・・。

 キャデラック選手権ではベテランの藤田寛之も3Rの9番(パー3)で手前の池に落としてダブルボギーの「5」の上がり。「風のジャッジミスだった」と大反省でしたが、最終日も77と振るわず、61位フィニッシュ。「改めて米ツアーのレベルの高さを感じた。アプローチとパットでパーセーブできなかった」と、日本選手には”壁の高さ”を痛感した様子でした。
 石川はこんな苦しみを味わいながらも続くトランジションズ選手権(フロリダ・パームハーバー、イニスブルックリゾート)でもまだ懲りません。初日の67で飛び出しながら2日目はまたも池に前途を阻まれました。苦戦の中、12番で15メートルのチップインバーディーを決めてカットラインにしがみつきました。なのに、次の13番(200ヤード、パー3)は7Iのショットが手前の池に落ち、ダブルボギーの「5」です。これで息の根を止められての予選落ちです。
 「想定外の池でした。普通ならあり得ないようなミスでスコアを崩していく。まだまだ甘いですね」と、ここでも遼クンの嘆き節です。
 
 トランジションズ選手権初日には5ホールでドライバーを置いて刻み、フェアウェイキープを心がけました。攻め方のバリエーションも随分増えた遼なのですが、ちょっとしたメンタル面でボールが曲がります。この初日には、16番でも3Wで刻みながら第2打を右に曲げてバンカーにつかまり、ボギーにしています。「左に行くのを嫌がって手先で合わせてしまい、逆方向の動きをしてしまった」(遼)。普通に打てば”ショットは悪くない”のに、こうしたメンタル面でミスを犯していくのでゴルフが崩れてしまいます。そのあたりが日本人選手に共通した”弱さ”です。大舞台の経験不足といってもいいかも知れません。よほどパットが入るか、ラッキーが重なるかでないと、4日間を通じて好スコアをキープするのは難しいのが実情でしょう。
 
 マスターズのオーガスタナショナルにも、フロリダとは違った圧迫してくるような池が待っています。連日4~5万人という大ギャラリーのどよめきなど、独特の雰囲気にも勝たなければなりません。それだけに好スコアを出せば、値打ちがあるのです。2度の予選落ちから3度目のマスターズにのぞむ石川遼。昨年、初出場で29位に入った池田勇太。フロリダで何度も痛い目にあった二人が、またひとつ成長してオーガスタを闊歩(かっぽ)してくれることを期待するのですが・・。